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「カワニナを放流すればホタルは戻る」は間違い?日本ホタルの会に聞く生態系の罠

初夏の風物詩、ホタル。その幻想的な光を地元の川に取り戻したいと、保護活動に興味を持つ方も多いのではないでしょうか。

「でも、ホタルなんてきれいな水とエサ(カワニナ)があれば生きていけるんじゃない?」
「ホタルを呼ぶために、カワニナを買ってきて川に放流しよう!」
……もしそう考えているなら、ちょっと待ってください!

実は、良かれと思ったその行動が地域の生態系を壊してしまう原因になるかもしれないんです。

今回は梅の公園でお会いした「日本ホタルの会」の井上務さんにお話を聞きました。

目次

ホタルにとって「良い環境」とは?

―まずは基本的なところから教えていただきたいのですが、ホタルにとってよい環境というのはどういう場所なのでしょうか?

井上さん:
難しい話になりますが、簡単にまとめるとカワニナが住む川」「木陰」「暗さ」の3つが重要になります。

―よく「ホタルはきれいな川にしか住まない」と言いますが、どうなのでしょうか?

井上さん:
そのようによく言われますね。ただ、きれいな水であることはもちろんですが、最も重要なのはホタルの幼虫のエサになる「カワニナ」が自然に生息しているかどうかです。

罠その1:他所からの「カワニナの放流」は生態系を壊す!

―そうなると、手っ取り早くカワニナを買ってきたり捕まえたりして、川に放流すればいい話……と、私のような素人は思ってしまうのですが、どうでしょうか?

井上さん:
はい、その質問もよくされます(笑)。
ただ、カワニナを安易に放流することには、大きく2つの問題があります。

まず一つ目は、「国内外来種」の問題です。
カワニナは安易に他の川から連れてきてはいけません。
もしどうしても放流して保護活動をするのであれば、本来そこにあったのと同じ環境、同じ遺伝子を持つ個体群を慎重に用意しなければならず、決して素人が勝手にやっていいことではありません。

罠その2:大人のカワニナは、ホタルの赤ちゃんの「エサ」にならない!?

―安易な放流は自然破壊に繋がってしまうんですね。もう一つの問題とは何でしょうか?

井上さん:
さらにホタルの幼虫にとって死活問題なのが、「人間が持ち込んで繁殖させたカワニナだけでは、エサにならない」ということです。
なぜだかわかりますか?

―まったくわかりません(笑)。

井上さん:
ホタルの幼虫というのは、生まれたばかりの頃は本当に小さいんです。水の中の何かのゴミと見間違うくらいの大きさで生まれます。

金魚のエサと同じくらいのホタルのたまご
金魚のエサと同じくらいのホタルのたまご
糸くずのようなホタルの幼虫
糸くずのようなホタルの幼虫

この極小の幼虫が食べるのは、もちろんカワニナです。
ただ、自分より何倍も大きな大人のカワニナに食らいつくことはできません。この幼虫は、自分と同じくらいの大きさの「カワニナの赤ちゃん(稚貝)」を食べているんです。

カワニナの標本
カワニナも成長します
砂利と見間違うようなカワニナの赤ちゃん
砂利と見間違うようなカワニナの赤ちゃん

つまり、生まれたばかりのホタルの幼虫が食べる「カワニナの赤ちゃん」が川にたくさんいなければ、ホタルは成長できません。人間が良かれと思って大きなカワニナばかりを放流しても、ホタルの赤ちゃんはそれを食べられず、餓死してしまうわけなんですね。

ホタルは「豊かな自然のサイクル」の象徴

―つまり、自然のサイクルの中でカワニナが川で繁殖し続けていないと、ホタルのためにはならないということでしょうか?

井上さん:
そういうことですね。
カワニナは雑食なので、川に落ちてきた落ち葉も食べますし、サワガニの死骸なども食べます。
そして、カワニナは貝ですので、立派な貝殻をつくるためには「カルシウム」が必要です。

ここ青梅市には石灰石がごろごろと落ちていますが、この石灰石のカルシウム成分が川に染み出し、それがカワニナの殻をつくる助けになっています。落ち葉、サワガニ、石灰石、カワニナ……すべてが繋がっているんです。

青梅の川にある石灰石
この石灰石も貴重な資源

―そう思うと、ホタルが自然に生息できる場所というのは、本当に奇跡のように貴重な環境なんですね。

井上さん:
そうですね。
この青梅市の梅の公園の小川も今でこそホタルが舞うきれいな川ですが、一昔前まではきっと生活排水などが流されていた時代もあったと思います。
そうした時代から比べると、今は随分と環境に優しくなりましたが、ホタルの光を通じて、もっともっと地域全体として環境保全のことを考えていけるといいですね。


ただ「エサを入れればいい」わけではない、奥深いホタルの生態と自然の繋がり。
幻想的なホタルの光を見かけた時は、その裏にある小さな命の連鎖と、豊かな自然環境にぜひ思いを馳せてみてくださいね。

日本ホタルの会について

今回お話を伺った井上さんが所属する「日本ホタルの会」は、1992年に設立された団体です。

ホタルを単なる観光資源や「人を集める目玉」として扱うのではなく、「豊かな里山環境の象徴」として捉え、ホタルをはじめとする身近な生き物が生息できる自然環境の保護・保全・再生のために活動されています。

主な活動内容
  • ホタルや身近な生き物の生息環境の調査・研究
  • 各地での環境保全・再生活動の支援
  • 自然のあり方を考える「ホタル観察会」や「シンポジウム」「談話会」の開催
  • 全国への啓蒙活動としての講師派遣
  • 機関誌「ホタルのニュースレター」の発行

「ホタルを増やしたい」「自然環境についてもっと知りたい」という方は、ぜひ日本ホタルの会から正しい知識と理念を学んでみてはいかがでしょうか。

👉 日本ホタルの会 公式サイトはこちら

お読みいただきありがとうございました!
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