青梅市のシンボル、御岳山(みたけさん)の山頂に鎮座する「武蔵御嶽神社(むさしみたけじんじゃ)」。
ここは古くから「おいぬ様」を祀る神社として知られ、現在では多くの愛犬家が訪れる聖地となっています。
でも、ふと疑問に思ったことはありませんか?
「おいぬ様って、ワンちゃんの神様なの? それとも違うの?」
今回は、意外と知らない「おいぬ様」の正体と、なぜ今ワンちゃんの聖地として親しまれているのか、その歴史と魅力をご紹介します🐶✨
「おいぬ様」の正体はオオカミだった!

結論から言うと、「おいぬ様」の正体はニホンオオカミです🐺
武蔵御嶽神社や、埼玉・秩父の三峯神社などで祀られている「おいぬ様(大口真神:おおくちまがみ)」は、かわいらしい犬ではなく、山の守り神であるオオカミを指しています。
日本武尊(ヤマトタケル)を救った白狼伝説
なぜオオカミが神様として祀られるようになったのでしょうか? その起源は、日本神話の英雄・日本武尊(ヤマトタケル)の伝説にさかのぼります。
御岳山に残る伝承
昔々、日本武尊が東国遠征の際、御岳山(または秩父の山中)で道に迷ってしまいました。
深い霧に包まれ、邪神が化けた白鹿に行く手を阻まれ、絶体絶命のピンチに陥ります。その時、どこからともなく一匹の「白狼(はくろう)」が現れました。
白狼は日本武尊の軍勢を導き、霧を晴らし、無事に山頂(または安全な道)へと案内したのです。日本武尊はこの狼の忠誠心と強さに感謝し、「大口真神(おおくちまがみ)として、この山に留まり、すべての魔物を退治せよ」と命じました。
この伝説から、オオカミは災いを防ぐ山の神として信仰されるようになったのです。
なぜ「おいぬ様」が信仰されるようになったのか
怖いイメージのあるオオカミが、なぜ庶民の間で広く「おいぬ様」として親しまれるようになったのでしょうか。そこには、人々の生活に密着した切実な理由がありました。
畑を守る「益獣」として
江戸時代、農民たちにとって一番の悩みは、畑を荒らすシカやイノシシなどの害獣でした。
オオカミはそれらの動物を捕食してくれるため、農作物を守ってくれる頼もしい「益獣(えきじゅう)」だったのです。
また、その強さから「火難・盗難除け」の神様(番犬的な役割)としても信仰されました。
「犬」のイメージと重なり、安産・健康の神へ
時代が進むにつれ、山に住む「オオカミ」の姿を見る機会は減り、人々の中で「おいぬ様」という言葉の響きから、身近な「犬」のイメージが強くなっていきました。
そこから、さまざまな語呂合わせや連想による御利益が生まれました。
- 健康・長寿: 「おいぬ」=「老いぬ(老いない)」にかけて、いつまでも若々しく健康でいられるように。
- 安産・子授け: 犬は一度にたくさんの子供を産み、お産も軽いことから、安産の守り神として。
このように、もともとは力強いオオカミへの畏敬の念から始まった信仰が、徐々に優しく親しみやすい「犬の神様」としての側面を持つようになっていったようです。
しもべから家族へ ~現代の武蔵御嶽神社~
かつて、犬は人間を守る「番犬」や、狩りの手伝いをする「しもべ」のような存在でした。
しかし現代では、犬はかけがえのない「家族の一員」です。
「おいぬ様」を祀る武蔵御嶽神社では、こうした時代の変化に合わせ、「人間もワンちゃんも一緒に参拝を楽しめる神社」として、全国でも珍しい取り組みを行っています。
今では、愛犬の健康を願う人々が「おいぬ様」にあやかるために多く訪れています。
愛犬と一緒に武蔵御嶽神社へ行こう!
実際にワンちゃんと御岳山へ行く際に知っておきたいポイントをご紹介します。
ケーブルカーはペット乗車OK!

麓の「滝本駅」から山上の「御岳山駅」を結ぶケーブルカーは、ペットの乗車が可能です。
ワンちゃん専用のスペースが設けられているので、他のお客様に気兼ねすることなく乗車できます。
ケージに入りきらない大型犬もリードをつないで乗車できるのが嬉しいポイントです。
ワンちゃん専用の手水舎でお清め
武蔵御嶽神社の手水舎(ちょうずや)には、人間用だけでなく、なんと「ワンちゃん専用の手水鉢」まで用意されています。
参拝の前に、ワンちゃんも手足(肉球)を清めて、神様にご挨拶しましょう。
また、拝殿前では愛犬のための「健康祈願(ご祈祷)」も受け付けています(要予約)。
商店街での食事やお買い物も一緒に

神社の鳥居前にある商店街では、多くの食堂がペット同伴可能です。
お店によっては「小型犬のみOK」「テラス席のみOK」などのルールがある場合があるので、入店の際は確認してみてくださいね。
まとめ
「おいぬ様」は、かつてヤマトタケルを助けたオオカミが起源でした。
しかし時を経て、今は私たちの大切な家族であるワンちゃんたちを優しく見守る神様として、青梅の山頂に鎮座しています。
次の休日は、愛犬と一緒にケーブルカーに乗って、天空の神社へお参りに行ってみませんか?
きっと、素敵な思い出と「おいぬ様」のご加護がいただけるはずです🐕⛩️
参考
- 青梅市教育委員会編『青梅郷土誌』(青梅市史史料集 第44号)、青梅市教育委員会、1994年
- 青柳健二『新編 オオカミは大神ー狼像をめぐる旅』イカロス出版、2024年


