いつ飛ぶの?プロが教える「ホタルの見頃」の確実な予想方法と鑑賞のポイント

夏の夜空を彩るホタル。今では各地で「ホタル観賞ツアー」が企画されるなど、人気の観光資源にもなっています。
しかし、観賞に出かける私たちだけでなく、実はツアーを主催する側にとっても 「今年はいつホタルが飛ぶのか?」 は最大の心配事です。
今回は、青梅市吉野梅郷の梅の公園でお会いした「日本ホタルの会」の井上務さんに、プロが実践する見頃予想の極意についてお話を伺いました。
一般的なシーズンは「6月中旬」だけど…

―まったくの素人なので、ホタルがいつ見られるのかすら見当もつかないのですが、一般的にはいつ頃がシーズンなのでしょうか?
井上さん: その年ごとの気候にも左右されますが、青梅などこの辺りの地域では、一般的には 6月中旬〜下旬 と言われています。
ただ、例えば大雨でホタルの卵や幼虫が流されてしまったり、そもそもエサとなるカワニナが育たなかったりすると、見頃や飛ぶ数は簡単に変わってしまいます。自然相手なので、ホタルツアーを主催する我々にとっても毎年本当に気がかりな問題なんです。
―毎年同じ時期に行けば必ず会える、というわけではないんですね。
プロはどうやって見頃を予想する?
井上さん: そうですね。ただ、もし近くにホタルの住処となる川があれば、 毎日じっと川を観察することで、だいたいのホタルの見頃は「確実」にわかるんです。
―えっ、そうなんですか!?
井上さん: ホタルは、卵から孵化して約10ヶ月もの間、川の中で「幼虫」の姿で過ごします。そして、春先(4月下旬くらい)になると、さなぎになるために川から陸の土の中へと「上陸」します。土の中で約40日間かけて成虫になる準備をし、ようやく地上へと飛び立つのです。
つまり、 4月頃から毎日川を見て、ホタルの幼虫が川から陸へ上がってくる姿を確認できたら、そこから「約40日後」がホタルの光が見られる見頃 というわけです。
私たちはこの作業を「上陸確認」と呼んでいます。
| ホタルの成長プロセス | 期間・時期 | 観察のポイント |
|---|---|---|
| 川での幼虫期 | 約10ヶ月 | エサのカワニナを食べて成長 |
| 陸への「上陸」 | 4月下旬ごろ | 夜間に川から土へ上がる姿をキャッチ |
| さなぎの期間 | 約40日間 | 土の中で成虫への準備 |
| 羽化・見頃 | 上陸から約40日後 | 夜空を舞う幻想的な光 |
―なるほど!……ですが、素人にはホタルの幼虫が見つけられない気がします。
井上さん:
たしかに明るい時間帯はわからないと思うのですが、実はホタルは幼虫であっても光るんです。そのため、夜の川を見に行けば、上陸のために陸地に出てきている光る幼虫が見られるかもしれませんよ。
―えっ、幼虫も光るんですね!とはいえ、毎日夜の川に張り付いて、その小さな光の移動(上陸)を確認するなんて、かなり地道な力技ですね!(笑)
井上さん:
そうですね(笑)。なかなか一般の方には難しい観察です。
ですので、やはり過去のデータに基づき、6月中旬から下旬にかけてホタルツアーが計画されることが多いですね。
ホタルが飛ばなかった時は「学びの機会」
―自然相手とはいえ、楽しみにしている参加者もいるので、ツアーの主催者さんは気が気じゃないですね。
井上さん: その通りです。ただ、私としては、もし万が一ホタルが出なかったとしても、 それを「学びの機会」に繋げられたらいい と思っています。
ホタルが現れなかったということは、その年の環境に何か「異変」があったということです。大雨による影響か、水質などの環境の変化か。そうした 「なぜ今年は出なかったのか?」 という原因を参加者と一緒に考えることこそが、自然環境を学ぶ上でとても大切なんです。
……とはいえ、それだけではどうしてもご納得いただけないこともあるので、何か別のリカバリー企画はいつもこっそり用意して行っていますけどね(笑)。
ホタルの見頃を知る「逆算の力技」から、自然環境への深い眼差しまで、井上さんのホタル愛が伝わってくるお話でした。
ホタルが飛んでいたらその美しさに感動し、もし飛んでいなかったら「自然の厳しさや環境の変化」について考えてみる。そんな視点を持てば、今年のホタル観賞がより一層味わい深いものになりそうですね。
日本ホタルの会について
今回お話を伺った井上さんが所属する「日本ホタルの会」は、1992年に設立された団体です。
ホタルを単なる観光資源や「人を集める目玉」として扱うのではなく、「豊かな里山環境の象徴」として捉え、ホタルをはじめとする身近な生き物が生息できる自然環境の保護・保全・再生のために活動されています。
- ホタルや身近な生き物の生息環境の調査・研究
- 各地での環境保全・再生活動の支援
- 自然のあり方を考える「ホタル観察会」や「シンポジウム」「談話会」の開催
- 全国への啓蒙活動としての講師派遣
- 機関誌「ホタルのニュースレター」の発行
「ホタルを増やしたい」「自然環境についてもっと知りたい」という方は、ぜひ日本ホタルの会から正しい知識と理念を学んでみてはいかがでしょうか。

